司法書士の「本人確認情報」を作成する対応方法が多い
不動産売却の時は、登記上の所有権を移転するために登記をしますよね。
その時に「権利証」を使います(「登記識別情報」と同じです)。
ところが、不動産取引の最後の決済前になって、
- 「権利書がないんですよね」
- 「権利証を紛失しちゃったんですよね」
- 「権利書がない場合でも大丈夫ですか?」
ということがあるんですね。
不動産売却したいけど権利証がない、どうしましょう。
権利証がないというのが大変
というのはわかってはいるんですよね。
確かに、登記をするのに、権利書は必要な書類です。
ただ、焦らなくても大丈夫です。
権利書がない場合というのは、「権利書が火事で燃えちゃった」という場合と同じですよね。
権利書がない場合には、再発行はできないのですが、不動産売却の取引の場では、主に司法書士の「本人確認情報」という手段を使って対応することが多いです。
司法書士の「本人確認情報」という方法は、売主本人を、登記する司法書士が確認する、という方法です。
今回は、不動産売却の時に権利証がない時に、どうやって対処する方法があるかについて、説明します。
権利書とはどんなものか
権利書は、その家の所有権があることの証明のようなものです。
不動産登記法上では、「権利書」という言葉ではなく、「登記済証」という言葉を使っています。
今は、それが、「登記識別情報」に変わっています。
難しい定義は、いろいろこねくり回せばあるにはあります。
よく昔のドラマで、借金のカタに「権利書を出せ」というものがありましたよね。
それくらい大事なもの、だと思っていただければOKです。
10年以上前の権利証は紙にハンコが押してある
まずは権利証をないと探さなきゃいけないということで、権利書がどんなものか、というところからですね。
不動産登記法が変わる前の、昔の権利書で、「登記済権利書」と書いてあります。
こういう表紙がついていて、司法書士が登記した事務所の名称が書いてあるのが普通です。
たいていの場合、こういった表紙になっています。
中を見ると、不動産の内容が書いてあるんですね。
土地が何平米で、建物は1階2階と大きさが書いてあったりします。これは、どんな物件を登記するのかを特定するために書いてあるんですね。
そして、最後の方にハンコが押してあるページがあります。
よく見ると「登記済」と書かれていて、法務局の朱色の印鑑がパカンと押してあるんですね。
これが昔の権利書です。
かなり前に不動産を所有している人は、こういった形で権利書が残っているのが通常です。
紙に朱色のハンコが押してあるのが特徴ですね。
登記識別情報はここ数年の権利書
平成10年前後くらいからは、権利書が「登記登記識別情報」というものに変わってきています。
ということに変わってきてます。
「登記識別情報」という、紙の権利書と同じように表紙があって、司法書士の事務所名が入っていたりするものですね。
形はあまり変わりがないんですね。
表紙を開けると、中身が違います。
いろいろた手書きやワープロの文字で書いてあるのではなく、「登記識別情報通知」という目隠しシールが貼ってある紙が入っています。
今は、権利書といえば、もう「登記識別情報」に変わってきています。
権利書と登記識別情報の違い
「紙にハンコが押された権利書」と「登記識別情報」の効力は同じです。
違いは、効力があるものについてなんですね。
昔の紙にハンコを押した権利書には、「その紙に書かれた権利書自体」に効力があったんですね。
一方で、登記識別情報は、登記識別情報通知の「情報」に効力があります。
登記識別情報通知の、目隠しの部分をめくると、12桁の英数字がアットランダムに書かれています。
その英数字が登記識別情報なんですね。
この登記識別情報の紙自体は、どこにあってもいいんです。
ここに書かれている英数字の番号が非常に重要なんですね。
この番号を盗まれると、権利書を盗まれたのと同じことになる、ということです。
権利書が盗まれたのと同じ、ということは、例えば、
この登記識別情報の紙は家にあります。
↓
目隠しシールが剥がされている
↓
そこに書かれている、英数字をメモした人がいる
↓
登記識別情報の紙自体は、盗まれていない
こんな状態でも、権利証を盗まれたのとおなじ
、ということなんですね。
その目隠しシールをもう一度貼り直してしまえばいいんじゃないんですか?
シールは貼り直しができない仕様になているんですね。
登記識別情報は、最初は目隠しシールが貼られた状態で送られてきます。
この隠しシールを1回はがすと、もうつかなくなっているんですね。
だから、ほんとに必要な時以外はこのシールははがさないでいるはずです。
『シールが貼ってあるけど、何だろう』と剥がしてしまっても、もうくっつくことはありません。
そういう時は、この英数字をみられないように、自分で管理するしかありません。
法務局は登記識別情報を再発行してくれません。
何かない限りは、ずっとシールはくっつけておく、ということです。
逆を言えば、「もう誰に見られているかわからない」という時、シールが剥がされていないのであれば、誰にも見られてないですよ、という証明なんですね。
法務局というお役所が、コンピューター化に対応する一環で変わった、というイメージですね。
これが、「権利書」と「登記識別情報」です。
再発行ができない権利書の代わりになるもの
不動産を売りたい時には、権利書(登記識別情報)が必要です。
ただ、再発行はできません。
再発行ができないなら、どうすればいいのか、ということになりますよね。
実は、方法はいくつかあります。
- 本人確認情報を作る
- 公証役場に行く方法
- 事前通知制度を利用する
本人確認情報を作る
登記をする司法書士が、「本人確認情報」という書類を作成して、登記するということができます。
この本人確認情報は、ざっくり言ってしまうと、「この物件を持っていたのが、○○さんで間違いないです」という、司法書士が作る証明書、のようなものです。
あかの他人の司法書士が、権利書(登記識別情報)をなくした人を保証するわけですよね。
だから、司法書士にそれなりの費用を払うことになります。
3万から5万ですめば安い方で、場合によっては10万円くらい必要になる場合もあります。
この「本人確認情報」というのが、権利書(登記識別情報)がないときの、不動産取引の中では、かなり一般的なパターンです。
公証役場に行く方法
もう一つ、公証役場に行く方法があります。
売主本人が公証役場に行って、そこで不動産取引の決済で使う登記の申請書類などに、署名や
押印をして、公証人に本人確認をしてもらう、という方法です。
「権利書がないけど、自分が不動産の売主です」よと本人確認をしてもらうんです。
費用は、司法書士の本人確認情報と比較すると、非常に安く、数千円単位ですみます。
ただ、手間がかかるんですね。
売主本人が事前に公証役場に行かなければいけないんですね。
公証役場まで平日に行って、となると時間がかかりますよね。
時間もかかるので、あまりないケースですね。
時間がかかるところがネックになるので、あまり利用されていませんが、登記費用をできるだけ抑えたい、というメリットはありますね。
ただ、一般的な不動産取引のケースではないです。
事前通知制度を利用する
権利書(登記識別情報)がないときに、「事前通知」という制度もあります。
事前通知の制度とは、
いったん権利書がない状態で、登記を申請します。
↓
法務局から、元の所有者(売主)宛てに
「この不動産の所有権を移転登記をしますけど、間違いないですか?」
と確認の手紙が届きます。
↓
この書類に「登記申請は真実です」と署名捺印し、
↓
2週間以内に返送する。
これで、はじめて登記の手続が進められます。
2週間の回答の期限までに、法務局に書類が届かなければ、登記申請が却下されてしまいます。
「事前通知」という制度を使えば、実質的に費用はゼロ円です。
魅力的ですよね。
でも、この制度は不動産売買などの取引が絡む時には利用している人は、ほぼいません。
というより利用しないほうがいいです。
そもそも登記申請する時点で、売主が100%完璧な状態でないのに、買主が了解しません。
だから、不動産取引では使われないんですね。
2週間という期限に、返送できなければ、取引自体もなかったことになるので、大きな金額が動く不動産取引ではあいまいすぎますからね。
事前通知制度を利用するのは、親族の間の贈与とか、期限がそれほど重要でない場合だけです。
権利書をなくした場合は早めの対応をするしかない
権利書がない!
って大騒ぎになるのは、たいてい不動産引き渡し決済の直前が多いです。
不動産決済日は、すべての取引が終了する日でもあるので、その直前になって「権利書がない」という時に、時間をかけて、公証人役場に行ったり、事前通知制度を使うことは、まずないですからね。
不動産決済の直前になって、権利書がないと、関わるすべての人が困ってしまうんですね。
司法書士も、急いで書類を準備する必要にも迫られます。
不動産屋も、すべての日程の調整変更の手続きをするかもしれません。
不動産決済の日ではなく、その前に行われる売買契約締結時契約の時に、権利書(登記識別情報)があるか、を確認しておいたほうがいいです。
不動産屋で売買契約を締結する時に、持ってきてもらう書類のリストに入っていることが多いです。
その時点で、「もしかしたら、権利書を紛失したかも」と言うだけで、解決できる問題なんですね。
事前に相談するだけでもいいんですね。
ちょっと確認するのをしなかっただけで、余計な費用が、数万円単位でかかることになってしまいますからね。
今回は、不動産売却の場合に、権利書(登記識別情報)がない、という話でしたが、「相続」の時には、権利書がなくてもいいんですね。
不動産の「売買」や「贈与」など、人が生きている場合は、権利書は必要ですけど、すでになくなっている人の権利書はもう、再発行しなくてもいいんですね。
権利書がない場合でも、ある場合でも不動産の価値には影響はありません。
むしろ、不動産売却を考えている時にこそ、正確な物件の価値がわかります。
今、どれくらいの価値があるのか、知りたいですよね。自宅を購入したときと、今の値段の差も知りたいですしね。
ネットで依頼すれば、簡単に査定してくれます。(不動産売却前でもOK!)